- PatchJGDとは
- PatchJGDは測地成果2000以降、世界座標化がすでにされた地域において地震等の地殻変動が発生した後に、国土地理院よりパラメータファイルが公開され、そのパラメータを使用して座標補正を行うことによって、地殻変動により変わってしまった基準点の座標値を、変動後の座標値に補正できるものです。
基準点測量を再度行うコストを省くことができます。国土地理院では、地域と時間ごとに「水平」位置の補正パラメータと「標高」の補正パラメータが公開されており、WingneoINFINITYでは「座標計算」に「水平」「標高」の計算、そして複数パラメータを時系列順に連続計算する「複合」が搭載されています。
- エリアの水平・角度誤差を前もって知ることができる!―その1
- アイサンテクノロジーでは、PatchJGDを始めとするパラメータ型の座標補正作業に対して、パラメータそのものが持つ歪みや伸縮率・標準偏差を算出して、色分け表示したり、適正な座標補正・座標変換をする技術を測地成果2000時の「座標変換マニュアル」のころより研究・開発してきました。 WingneoINFINITYのPatchJGD座標補正計算にもこの色分け機能は搭載されており(Ver2.10以降)、事前の調査・打ち合わせの段階からPatchJGDの使用を可とする判断・不可とする判断の材料とすることができます。 また、3D-BMBでは、地域パラメータの作成からの3次元座標補正をサポートします。
電算プログラム検定証明書
- エリアの水平・角度誤差を前もって知ることができる! ―その2
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歪み:水平位置(x,y軸上での)の変化量の関係により角誤差が大きくなる度合い
※ 元の形状が正方形の場合、補正後の大きさが異なっていても形状が近ければ値は小さくなる
伸縮:水平位置(x,y軸上での)の変化量の関係により面積(辺長も含む)の変化が大きくなる度合い
※ 元の形状が正方形の場合、補正後の形状が異なっていても辺長変化が少なければ値は小さくなる
標準偏差:標高位置の補正量のばらつき具合を表し、値が小さいほど変化量は一様である
※ 4隅の変化量に違いが少ないほど標準偏差は小さくなる(一律標高が上(又は下)に変化した状態)
名称 | 緯度 | 経度 |
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TKY2JGD | 30秒 | 45秒 |
PatchJGD | 30秒 | 45秒 |
PatchJGD(標高版) | 30秒 | 45秒 |
SemiDynamic | 150秒 | 225秒 |
上記の数値はm単位に直すと大体1km×1kmに近い値という単位にはなりますが、正確に1kmというわけではありません。(原点付近で920m×1120m)習慣的に1kmメッシュといった表現を使いますがあくまでメッシュは緯度・経度上で等分割されています。
- 複合計算の必要なケース
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WingneoINFINITY Ver2.10には、PatchJGD複合計算が新搭載されています。
従来のPatchJGDによる座標補正計算では、補正する座標群に対して1つのパラメータファイルのみを指定していましたが、本プログラムでは複数個のパラメータを設定して、パラメータと“対(つい)”に設定した基準日付順(またはその逆)で、まとめて複数のパラメータによる座標補正計算を行うことができます。
これから作業をされる ある場所の座標のX・Y・Z値は、どの段階の座標値でしょうか?
@測地成果2000以前(TKY2JGDによる座標変換前、あるいは改測・改算、地域パラメータによる変換以前の座標である。
A @が適応された状態
B A以降、地震等の地殻変動の影響を受け、PatchJGDの水平パラメータによる座標補正が適応された状態
C B以降、標高パラメータが公開され、Z座標も補正された状態
D 3.11の震災以降、さらなるPatchJGD【水平】パラメータが公開され、Cに適応された状態
E 3.11の震災以降、さらなるPatchJGD【標高】パラメータが公開され、CまたはDに適応された状態
ある場所の座標Aが@の状態であった場合これから作成する測量・登記の座標は最大の工程としてA〜Eを順次行う必要があります。Aの場合は、B〜Eを、Bの場合はC〜Eを考慮する必要があります。PatchJGD複合計算は、これらの計算を1つの作業データにとりまとめることで、複数パラメータと座標補正の取り扱いにミスが生じないよう工夫されています。
- PatchJGDの使用には、検測・精度の確保が必要
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PatchJGDによる座標補正は「改算」に分類され、使用には精度の確保を示す点検測量が必要とされます。
つまり、発注された測量業務においてPatchJGDを使用する場合には、5%の実測による点検測量=精度の確保を得る必要がある意味になります。
場所によっては計算によるパラメータでは拾いきれない変動が存在します。液状化によるような狭いエリアの変動を想像するとわかりやすいかもしれません。
- PatchJGDの限界―その1
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まずPatchJGDは、地殻変動が一様である地域の補正に適しており、地殻変動が一様でない地域の補正には向いていません。
地殻変動が一様でない地域では、約10km点間から求められた1km格子のパラメータによって求められた補正量が、地域内の座標に適合できない可能性があります。液状化以外にもこのような一様でない地殻変動エリアは存在しており、PatchJGDを用いず、改測を行ったり、地域ごとのパラメータを作成して座標変換を行う等の対処が必要となる場合があります。
- PatchJGDの限界―その2
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「PatchJGD」による座標補正は、補正したい座標を囲む4点の1km格子点の座標補正パラメータから内挿により計算される方式となります。
国土地理院の発表によれば、3.11大震災後、地震の影響を受けた43,312点の三角点成果を改定しましたが、改測による成果改定は1,846点です。約95%の三角点41,466点は、PatchJGDによる改算による成果改定です。すなわち、三角点の改測割合は約5%です。http://sokuseikagis1.gsi.go.jp/SysMsg/h23touhokutaiheiyou.html そのため、自治体によっては改測点数を増やし、「独自パラメータ」方式を採用しているところがあります。正確だが経費がかさむ改測と品質に不安なPatchJGD方法による改算、その中間的方法が、独自パラメータによる成果改定ではないでしょうか。
- あらたな取り組み
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アイサンテクノロジーではこのような問題を回避する方法として新製品「3D-BMB世界座標取得システム」を開発しました。
3D-BMB世界座標取得システムは、先述の基準点の改測にかかるコストを抑え、かつPatchJGDに内包される問題点である局所的に大きなズレのある箇所の抽出と、最適な補正パラメータ算出によるこれらの箇所を含めた座標補正を可能にします。
すでに先進的な地方自治体様には採用がはじめられており、市全域での座標補正と管理、そしてその成果を元にした発注により、より正確で座標相違によるトラブル等が起きにくい環境がスタートしています。